
- リヒテル(スビャトスラフ)
- ラフマニノフ
- ビクターエンタテインメント
ディスク1
- 前奏曲集op.23~第1番嬰ヘ短調
- 同第2番変ロ長調
- 同第4番ニ長調
- 同第5番ト短調
- 同第7番ハ短調
- 同第8番変イ長調
- 前奏曲集op.32~第1番ハ長調
- 同第2番変ロ短調
- 同第6番ヘ短調
- 同第7番ヘ長調
- 同第9番イ長調
- 同第10番ロ短調
- 同第12番嬰ト短調
リヒテルの遺産の一つ
ベートーヴェンの“テンペスト”等と同様に、リヒテルの偉大さを知るには格好のアルバムです。 ラフマニノフの前奏曲集はショパンの前奏曲集とよく比較されますが、 全曲集となるとその録音はとても少なく、これだけでも如何に困難な技術を要するかがわかります。 このリヒテル盤も全集ではありませんが、1959年(41歳時)に録音された 作品23-2,5と32-2を加えれば計16曲となります。 演奏内容はあまり情緒に流されることなく曲の骨格をしっかりと表現したものとなっており、 結果、それが曲の美しさや力強さを聴く者の心にダイレクトに伝えてくれます。 もちろん、リヒテル56歳時のテクニックは完璧この上ありません。 アシュケナージやワイセンベルク盤に比較すると、どこか泥臭いかもしれませんが、 麻薬の様に何度も繰り返し聴きたくなるのはいつもリヒテルのこの盤です。 今となっては願いが叶いませんが、是非全曲録音してほしかったです…。
生演奏は、もっと凄かった。−−リヒテルにおける生演奏と録音の差
名盤である事に異論は無い。しかし、一つ、不思議な事が有る。−−リヒテルは、1970年に初来日した。その際、中学生だった私は、東京で、リヒテルの独奏会を3回聴く幸福に恵まれた。そして、プロコフィエフのピアノ・ソナタ第7番、ムソルグスキーの『展覧会の絵』、そして、ラフマニノフの前奏曲集を、それぞれの後半に聴いた。その3つの演奏会の感動の大きさは、とても言葉で表す事の出来無い物で、私は、この3夜を切っ掛けに、クラシック音楽を愛する人間と成った。だから、その3つの演奏会は、私の人生を変える物だったのである。 タイムマシンが作れない以上、あの3つの演奏会の感動を再び体験する事は出来無い。だから、私は、若き日のリヒテルが初演者であったプロコフィエフのピアノ・ソナタ第7番とムソルグスキーの『展覧会の絵』については、古い録音であるが、リヒテルが絶頂期に在った時代の素晴らしい録音を聴く事で、初来日の際のあの感動を思ひ起こして来た。LP時代から聴いて居るこの2曲の録音は、録音の古さにも関わらず、素晴らしいCDで、それはそれなりに、タイムマシンの代わりに成って居る。ところが、何故か、ラフマニノフだけは、彼の録音は、1970年の秋、東京の共立講堂で聴いたあのラフマニノフには、残念ながら、遠く及ばないのである。それが、ラフマ二ノフの音楽の特性なのか、録音のためなのかは分からないが。 名盤である事に異論は無い。しかし、生演奏で聴いたリヒテルのラフマニノフは、もっと、もっと、凄かったのである。 (西岡昌紀・内科医)
求めていたラフマニノフが!
色々なピアニストの前奏曲を聴きましたが、このレーベルはラフマニノフ前奏曲の魅力を堪能出来る素晴らしい作品に仕上がってます。楽譜に忠実でありながらリヒテルのその素晴らしい音楽性によって「これがあの曲か!?」と思わせる程の魅力ある演奏です。面白いのはラフマニノフ自身がどう演奏したかなどお構いなしに楽曲の持つ魅力を引き出している所でしょうか。明らかにラフマニノフ自演やアシュケナージより美しいです。少なくとも私はそう感じます。日本でも人気高いOp.23-5などは間違いなくこの演奏が最高です。またアシュケナージと比較して聴くのも面白いでしょう。どちらが良いという訳ではありませんが、リヒテルを聴いた後にアシュケナージを聴くと、アシュケナージはつぶさに楽曲を分析して意識して演奏しているという点がくっきり見えてきます。リヒテルの演奏はダイレクトに心に届くので、技巧も何も感じなく、全てが音楽の中の必然であるかの様に感じます。アシュケナージの演奏もかなりハイレベルにまとまっているのですが、根本的な音楽に対するアプローチが違う様に感じます。ラフマニノフ愛好家は勿論のこと、興味をお持ちの方であれば是非一度聴いてみてはいかがでしょうか?
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- 平井丈二郎 / 全音楽譜出版社
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